わたしが一番淋しかったとき
わたしが一番淋しかったとき
華やかな主役でいられた
そこは落ち着かない高い席
底辺のどん底が居心地がいいのに
見下ろす高座には誰もいなかった
わたしが一番淋しかったとき
家族に囲まれ目の廻る忙しさ
みんな自分勝手で無駄遣い
あれが欲しいあれが食べたい
そんな家長は貧しくて
わたしが一番淋しかったとき
妻を捨て親を捨て友を捨て
一家離散でみんなばらばら
家を売り仕事も辞めて
空港から出国するとき
わたしが一番淋しかったとき
みんな次々に死んでゆき
ここは老後の戦地かと
生き残っているのは誰か
手当たり次第に電話してみる
わたしが一番淋しかったとき
仕事に逃げ本に逃げ
旅に逃げて自分を見失うとき
しがらみは切り捨てられず
いつも後ろを振り返る
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