蝉の遺骸ほど悲しいもの
夏の終わりに
いつしか蝉の協奏はやみ
生命の限りを尽くして
路上に落ちた
蝉の亡骸ごろごろと
それはせいいっぱいの生を
鳴いて鳴いて鳴き尽くしたものの
涙も涸れて声も嗄れ
出尽くした遺骸だった
わたしもそうありたい
誰か女流作家が行っていた
書いて書いて死んだらいいのよ
何も出てこなくなった
出がらしで死にたい
そのときは路上にそうして転がっているだろうか
九月になる
蜩も鳴き疲れ木から落ちて死んでいた
秋蝉もいなくなると
静かな木立に秋風
葬送のうたをそれから風琴が奏で始める
TOP