何ですか、この異郷感は。

何ですか、この異郷感は。
まるで、祈りを知らぬ、
湖に棲む火星人のようですね。
橋の上にいる少女が今日も、沈黙を抱えて、三年間、毎日欠かさずに、湖の中にいる僕のことを見つめております。
今日もあの、手作り感満載の指輪をつけているのですね。
気のせいか、三年の間に、あの少女も少し、大人びたようです。
あ、指輪を湖に投げようとしてる! ダメですよ! 大切にした方がいいですよ!
あ、投げた! 大丈夫です、僕がキャッチしますから。そのために、僕はわざわざ湖の中に棲んでいたのですよ。そういう運命だったということです。
キャッチ失敗しました。水の底へ沈んでいってしまいました。ごめんね。
ああ、悲しい。
なんで、僕が悲しんでいるのでしょうか。
ああ! 僕は火星人なんかじゃない、人間なんだ! 人間なんだ!
早く湖から出してくれ! 僕は人間なんだ! 人間なんだよ……。
指輪を必死になって探す火星人がどこにいるっていうんだ!
……と思いながら、僕は、少女がスローモーションで指輪を投げるのを、隣で見つめていた。
それを止められずに、咎めることもできずに。
指輪がポチャンと、水の中に落ちる。
僕は背を向けて、苦しく歯を噛みつぶしながら帰ろう。
そして、彼女の大人びたのを、静かに祝福しよう。

26/01/20 11:51更新 / しゅんや
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