雪の精
北の国には雪虫がいる
彼らが姿を見せだすと
その7日後には雪が降る
ところが今年は雪の到来も遅く
そもそも雪虫を見かけなかった
いや違う
確かに雪虫を見た
それは10月の末頃で
初雪が降るにはまだ早い
時期はずれの頃だった
そしてその7日後に雪は降らず
12月に入ってようやく雪が降り出した
何だか今年は全てが変だ
気候がおかしい
何かがおかしい
日本は一体どうなるのだろう?
そういえば雪虫は
オスにだけ口がないらしい
それを知った時の私の衝撃
あの瞬間を忘れない
ふわふわの綿毛は実は綿毛ではなく
雪虫が分泌する体の脂で
彼らが実はアブラ虫の仲間だと知って
何となく嫌だなぁと思ったこともあった
でも生まれながらに口がなく
食する楽しみを味わうこともなく
一生を終える彼らを
何となく不憫に思って悲しくなった私は
それ以来毎年雪虫を見ると
ふわふわと漂うその姿に
生命の愛しさを感じずにはいられない
そんなふうに
私の心を動かした彼らは
実は雪の精なのかも知れないなと
心の片隅でふと思った
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