名前
子供の頃
人の名前が羨ましいとよく思った
特に花の名前の人は
その名前を持つだけで
可憐な香り立つような人であるように思えて
何だか羨ましかった
私は自分の名前が嫌いだった
ありふれている上に
音の全てが「お」の段で構成されているのが嫌だった
大人になってから
同じ名前の人がこの名前が好きだと言ったので理由を聞いてみると
「だってローマ字で書くと、母音が全部Оだから、視覚的に可愛くていいでしょ?」…というのだ
確かにそれはそうかも知れないが
その程度のことでは私は自分の名前を好きにはなれなかった
「お」の段で名前が構成されていると
音が何だかもっさりしている
もっと軽やかで明るくて可愛い名前が良かったと大人になっても思っていた
だけど漢字2文字の最初の文字が
表す深い意味を知った時
ちょっとした感動とともに
私はこの名前が少し好きになれそうだなと初めて思った
それは本当に意外な意味で
恐らくそれを知る人はあまりいないと私は思う
私は心の中でそっと
その崇高な意味をお守りにして
これからもこの名前と
生涯静かに寄り添っていきたい
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