春の記憶
春待ちわびて幾年月
何度の春を迎え
見送ったことだろう
いくつもの別れと
いくつもの出会いを繰り返し
そしてまた誰もが皆
次の春を待つ
卒業式の次の日
私を乗せた列車が動き
ホームで涙目で手を振る母に
わざと平気な顔して手を振り返した私
その後すぐに差し掛かった踏切で
ふと外を見るとそこには君がいた
部屋の窓から外を見ると
なぜかいつも家の前を散歩していた君
私と目が合うと笑顔で手を振り話しかけてきた君
卒業前には想いを告げられ
返事を返すまもなく
旅立つ日を迎えた私
そんな私を列車の窓越しに見つけた君は大きく大きく手を振った
私も大きく大きく手を振り返した
細切れの記憶が今も時折蘇る
時は過ぎ思い出は過ぎゆく
あれから何度の春を迎え
見送ったことだろう
春待ちわびて幾年月
遠い昔のひとコマの春が
私の記憶の奥底に今も息づく
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