匂い

懐かしい歌を聞きながら

遠い昔を思い出している

学生だったあの頃 

記憶はもうまばらだけど

それは時折セピア色に色づいて

脳裏におぼろげに蘇る

コマ送りのように

断続的に

切れぎれに



昔の記憶には匂いがある

それは街を抜ける風の匂い

夕暮れの台所から漂う

煮込み料理の匂い

ラッパを吹きながら売りに来る
豆腐屋さんの豆腐の匂い

音を立てて通り過ぎる路面電車から

立ちのぼるかすかな砂埃の匂い

記憶と共に蘇る

様々な匂いがある

あれが昭和の匂い

そして昭和そのものが

私の心の故郷かも知れない





24/02/27 15:49更新 / 志月
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