匂い
懐かしい歌を聞きながら
遠い昔を思い出している
学生だったあの頃
記憶はもうまばらだけど
それは時折セピア色に色づいて
脳裏におぼろげに蘇る
コマ送りのように
断続的に
切れぎれに
昔の記憶には匂いがある
それは街を抜ける風の匂い
夕暮れの台所から漂う
煮込み料理の匂い
ラッパを吹きながら売りに来る
豆腐屋さんの豆腐の匂い
音を立てて通り過ぎる路面電車から
立ちのぼるかすかな砂埃の匂い
記憶と共に蘇る
様々な匂いがある
あれが昭和の匂い
そして昭和そのものが
私の心の故郷かも知れない
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