鏡
鏡の中に私が宿る
それはずっとその昔
私がまだ若かった頃
母が買ってくれた私のための鏡台
それから私はいつの日も
気づけばそこに座っていた
辛かった
とても辛かった
幸せなんかじゃなかった
だけど幸せを演じるしかなかった
そうせざるを得ない毎日
そんな中でいつも私は
その鏡台の前に座っていた
あれから幾年月過ぎただろう
私は今は疲れ果てながらも
以前と変わらず鏡の前に座る
もう何十年もそこに座っているけど
そこにあの頃の私はもういない
辛かったけど
あの頃の私は若かった
それだけでも幸せだったのだと
今になってようやく気づいた
時の流れは残酷なものだね
若かったけど不幸だった私と
不幸とは決別したけど
老いてしまった私
そんな私を見続けてきた
この鏡台は何を思うのだろう
明日も明後日もこの先ずっと
私はまたこの鏡台の前に座り続ける
明日は何が見えるだろう
それは過去かも知れないし
未来かも知れない
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