冷めていく夏
ふとそれまで大切にしてきたものを手放したくなる時がある
それまでこだわっていたこと
どうにかしたいと努力していたこと
困った時の頼みの綱と思ってきたこと
それらのことがもう必要ないと思える時が突然訪れることがある
理由もなく
心の熱が音を立てて引いていくことがある
海辺の砂が引き潮にさらわれて
サーッと引いていくように
子供の手から離れた風船が
風に乗ってどんどん遠ざかるように
私の心から何かが掻き消されて
跡形も無くなるのを感じることがある
冷めていく夏
冷えていく心
灼熱の日差しで身も心も疲れ果てているはずなのに
心の片隅で何かが整い
何かが手放されていく
自分でもよくわからない感覚の中で
冷めていく夏
冷えていく心
生きていく中での数知れない
しがらみは
こうして心から引き剥がされていく
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