冷めていく夏

ふとそれまで大切にしてきたものを手放したくなる時がある

それまでこだわっていたこと

どうにかしたいと努力していたこと

困った時の頼みの綱と思ってきたこと

それらのことがもう必要ないと思える時が突然訪れることがある

理由もなく
心の熱が音を立てて引いていくことがある

海辺の砂が引き潮にさらわれて
サーッと引いていくように

子供の手から離れた風船が
風に乗ってどんどん遠ざかるように

私の心から何かが掻き消されて
跡形も無くなるのを感じることがある

冷めていく夏

冷えていく心

灼熱の日差しで身も心も疲れ果てているはずなのに

心の片隅で何かが整い
何かが手放されていく

自分でもよくわからない感覚の中で

冷めていく夏

冷えていく心

生きていく中での数知れない
しがらみは

こうして心から引き剥がされていく



23/07/24 10:54更新 / 志月
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