ステラ
右手にカンテラ左手にカバン
中折れハットを目深にかぶり
にわか雨のような声でその人は言った
「星を集める旅をしてるんだ」
かつて夜空は星で溢れてた
昔読んだ絵本に書いてあった
今ではすっかり雲におおわれて
街灯だけが静かに瞬いてる
木漏れ日ような声でその人は言った
「星を集める旅をしてるんだ」
いつかカバンの中を見せてもらった
無限の光が詰め込まれてた
それは銀河と言うらしい
「まだほんの一部だけどね」
右手にカンテラ左手にカバン
中折れハットを目深にかぶり
その人は明朝この街を発つらしい
そよ風のように笑っていた
「君にも少し分けてあげよう」
置き手紙のそばに小瓶がひとつ
「名前をつけてあげるといいよ」
光の粒は歌うように踊る
あぁ ステラ
今日もまだ星は見えないね
あぁ ステラ
あの人はまだ旅をしてるんだね
あぁ ステラ
人差し指で軌跡をなぞって
ドーナッツを食べる
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