生きるということは素晴らしいらしい

突然海の真ん中に放り出されたから
溺れないためだけにもがいていたら
いつのまにか泳げるようになっていた

見渡す限り水平線
星も月も太陽もない
目印も行き先もない
合ってるかどうかも分からない

少しずつ身体は重くなる
だんだん荷物は重くなる
増えることはあっても
減ることは決してない

例えばそれを少し預けたり
半分ずつにしたりしながら
人はなんとか浮力を確保するらしい

まるで僕とは大違いだな
抱えた荷物にのしかかられて
遠のく水面と近づく水底
肺の酸素がなくなった

ひとりで頑張って泳いで
手に入れたものは
心に絡みついた鎖と
両足に絡まった重りと
溺死という最後だった

一番苦しい死に方らしい
他の死に方を知らないから
本当かどうかは分からないけど

23/02/08 00:28更新 / 平沢小歌
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