魔法をかけて

少女は夜に魔法をかけて
とびきりステキな夢を見る
凍えるほどの孤独を忘れて
泣き腫らした目を閉じて眠る

少年は夢に魔法をかけて
あたたかい夜につつまれる
ヒビだらけの花瓶をそっと
壊さないように抱きしめる

逃げて逃げて逃げた先で
たどり着いた部屋は
不思議と居心地がよかった

少女は星に魔法をかけて
流星群をまぶたに映す
悲しいことも苦しいことも
涙の星と流れてゆけ

少年は自分に魔法をかけて
怖くないよ寂しくないよ
今にも割れそうな花瓶を
すがるように抱きしめる

逃げて逃げて逃げた先で
出会ったあなたは
なぜだかボクと似ている気がした

どこかで誰かが魔法をかけた
それは星にのって歌になって
少女の涙をそっと拭った
少年の傷をそっとなでた
せめて安らかに眠れるようにと

24/01/16 00:39更新 / 平沢小歌
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