涙の居場所

いつでも1人の帰り道
感じる寂しさはいつも一緒
繋ぎ合わさる分子のように
並ぶ灯火を追い抜いた

誰かに気づいて欲しかった
静かな夜の空を割って
どこで消えたか分からない
歌の残響を追い抜いた

涙が胸を張って瞼を飛び出せるのは
一体いつだ 僕にはわからない

景色にそぐわない感情が
すんで飲み込んだこの声が
居場所を求めて泣いている
他でもない 僕の内側で
手に余り落ちる 今にも
抱えきれない情動は
誰の邪魔にもならないところで
せめて 歌でも歌おうか


お祭りの空気壊さないように
なるべく静かに空を切る
すれ違ったそれが誰かなんて
誰も気に留めないのに

素敵な服も手拍子も
笑顔も行き交う何もかも
心に取り込まずに過ぎる
瞼の信号を止めて

街で弾ける感情が
心を動かし始めたら
あらゆる景色 鮮明になって
僕にも見えてしまうから
奥底に隠していた
自分にさえ分からないように
出たがって泣いていた涙が
僕にも分かってしまうから

本当はどこでだって好きに口ずさんで
誰よりも広い世界を渡る
僕の肩身がこんなに狭いはずは

あまりに場違いな歌声が
飛び出すせっかちな涙が
居場所が欲しいと泣いている
それを見て僕も泣き出す
誰がどんな顔してすれ違おうとも
誰も気に留めないのに
泣き顔だけは許されないと
君はまだ思っている

23/05/19 22:04更新 / でんしん
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