歌と相槌

何かの祭りのコンサート
ギターを持って座るシンガー
歩きつかれた僕ら2人も
招かれるようにベンチに座った

神秘的なほど金色に光り
木漏れ日がステージを飾った
伸びやかな声が一面を包み
知らない曲が胸で踊る

そんなにかっこいい立ち振る舞いをして
喋る時はちょっとかしこまりすぎていて笑った

彼は本当に楽しそうにステージで歌う
辺りは人がまばらだ それでも楽しそうに
僕らもちゃんと聞いているよ せめてそうするよ
告白が実った時のように嬉しそうだったから


夕べの疲れが音符の上で
眠ってしまいそうになった
カラオケ 誰も聞いていなかった
あの彼ほど上手くはないけどさ

並んだベンチにもしも1人もいなかったとしたら
そんなことを考えてまた歌声に耳を傾けた

彼は本当に楽しそうに僕たちへ歌う
誰もいないライブハウスでもこんな風に歌うのかな
ラスト一曲 それを前にしてどんな気持ちなのかな
抱きしめられた胸の中のように
離れたくないだろうな


離れてしまった夕べの僕を
朝に恨んだ
誰も聞かない歌の価値を
僕の価値を抱きしめた

彼は本当に楽しそうにステージで歌う
耳鳴りを引きずる程度なら最後まで聞いてやろう
手が痛むほどの拍手でもっと笑顔にしてやろう
喋りかけて返す相槌のように
拍手を送ろう

22/10/29 15:46更新 / でんしん
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