琥珀虫
僕の目線が今よりも
ずっとずっと低かった頃
コフキコガネが散らかっていた
とても不思議な夏があった
太陽がいちばん高くて強い
午前授業の帰り道
一級河川にかかった橋の
フェンスの隙間にあれはいた
溶けるようなコンクリート
耐えるように転げ落ちていて
二歩三歩先にも続いた琥珀が
まるで道標みたいだった
落とし物を探す帰り道
少年の目には宝物だらけ
だってまだ何も失くしていない
お日様さえ見つけられていない
いつの夏を越した頃か
コフキコガネはいなくなった
探そうとするあの子も
もういなくなっていた
太陽を見つけた少年は今
月の静かさを好いているよ
世界の目線が今よりも
ずっとずっと低かった頃
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