親愛のバレンタイン 2

彼女は甘く強い塊を
彼に上げたらしい
ちょうど今夜の空に浮かんだ
満月のようだと思う

冷静に今日を過ごせるように
自分で動いてみたのに
知らず知らずに求めていたと
刺す月光に教わった

「いつもありがとう」
一文字ずつ 噛み締める日にしよう
みんなからの文字を繋いで
判別できる言葉になるには
少しだけ足りなかった
伝わった、伝わったと確かめながら
今日はなおさら不安が募った


こんなに浮かれてたのは
開けてびっくり 自分だけで
この耳が待ち望んでいた
あの言葉は聴けなかったけれど

「いつもありがとう」
体裁だけ 細切れにしてばら撒いた
舌触りの良い欠片たちを
おいしいという言葉を聞き取れたから
それでいいじゃないか
これでいい、これでいいと言い聞かせながら
今日はみんなと早めに別れた

今日はみんなが遠い気がした

22/02/14 18:35更新 / でんしん
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c