邂逅
視界の縁できらりと輝くのは「死者達」の魂魄か
それとも病んだ眼球の見せる幻覚なのか
しかし、俺にとってそんな事はどうでもよく
唯、そこに気配を感じられればそれでよいのだ。
その光は絶えず俺を見張ってゐて、
どうやら俺に会ひに来たのかもしれぬのだ。
だが、その光るものは決して面を現はす事はなく
只管、そのものの発する光が俺の視界の縁にてちらりと輝くのだ。
俺はそれにどう対していいのかも解からず
しかし、その光こそ俺が長年待ち望んだ邂逅なのか
それが死んだ者達の魂魄である事を望んでゐる俺が確かにゐて、
死んだ者達との邂逅が待ち遠しいのだ。
――死んだ者達との邂逅。
などと嗤ふ奴がゐて
それでも死んだ者達の「声」が聞きたいのだ。
そして、その気配に抱かれたとの懐かしい感覚は
何故湧くのか解からぬとしながらも、
しかし、俺はこの感覚を知ってゐた筈なのだ。
この懐かしさこそ、俺が俺であり得た根本で、
俺の源流に繋がる何かなのだ。
確かに俺の視界の縁できらりと輝くものがあり、
俺はそれに対して幽霊の如く存在するものとして
俺なりに看做したいのだ。
さうすれば、俺は確かに生き返るのが解かり切ってゐた。
瞼がBlack holeのシュヴァルツシルト半径、
つまり、事象の地平面の暗黒の象徴に等しいとすれば、
なにゆゑに俺の眼球の縁にきらりと輝くものが存在するのか
とても「合理的」に語り果せるのかもしれなかったが、
しかし、そんなことは俺にとってはどうでもよく、
唯、俺の視界の縁にちらりとその姿の残像を残して輝くそのものは、
やはり死者達であってほしいと
何処かで期待する俺が確かにゐて、
さうして俺は俺の存在を実感するのだ。
なに、本末転倒。
それで構はぬではないか。
土台、生とは本末転倒したものでしかないのだから。
俳句一句短歌一首
死者に会ふそのをかしさの夜長かな
漆黒の闇に消え入る猛者どもは共食ひをして俺と叫ぶか
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