薄明の中の闇

其処に開けた闇へ至る道に
立てる脚を持ってゐるならば、
しっかと両の脚で立ち給へ。

もしそれも出来ないといふのであれば、
匍匐してでも薄明の中でその重たき体躯を引き摺ることだ。
さうして漸く目指すべき闇が開けるに違ひない

なにゆゑに今更闇なのかと問ふ奴には
ただ、かっと目を見開き睥睨すればよい。
それが唯一のお前の答へるべき姿勢なのだ。

そして、闇に至れば、闇を愛でるがよい。
しかし、此の世に存在しちまったものに
闇に至るべき術はないのだ。

夢のまた夢、それが闇なのだ。
それに気付いてしまったならば、ただ、黙って瞼を閉ぢて
闇紛ひの贋作の闇に戯れる事だ。
さうして、お前に何かが生じれば、
それを以てして
お前はこの世知辛い此の世で生を繋げる筈だ。

ふうっと一息吐いて
そうして、胸、否、肚一杯に息を吸って
頭蓋内を攪拌してみる事だ。

其処には必ず異形の吾が棲んでゐて
にやりと気色悪い嗤ひを浮かべて、
お前の訪問をぢっと待ってゐるのだ。

それを知りさへすれば、
どれほどお前が此の世を生き易く出来るか計り知れぬのだ。

ただ、生きろ。
それが死したる俺の生きたるお前への遺言だ。

俳句一句短歌一首

秋風に 心誘はれ 魂魄を噛む

生き延びる 術は誰もが 知らぬもの それでも生きる 覚悟があるのか


19/11/25 20:06更新 / 積 緋露雪
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