口惜しきは
口惜しきはお前の生に対するその姿勢なのだ。
お前は生に対してかくの如く断言しなければならぬ。
「死んだやうに生き永へえるには、《吾》は《吾》の無間地獄から抜け出すべく、《吾》は須からく覚悟を持つべき事。」
それは陽炎の如く曖昧模糊とした《吾》の造形を意識は《吾》には齎さないが、それでも《吾》は抽象の中にほんの僅かな具象の欠片を《吾》に見出しては、安寧を抱くのだ。
それ、再び《吾》から陽炎が飛翔する。薄ぼんやりと前方を眺めてゐると《吾》の体
amp;#36544;から陽炎が湧き立つ翳が見えるのだ。
それで《吾》はかう断言しなければならぬ。
「《吾》この珍妙なる存在よ。最後までその正体を現はす事なく、《吾》が太陽のやうに非常に高温なコロナの如き陽炎を放つことで、《吾》を敢へて現実に順応させる陽炎よ。
《吾》の内発する気は祝祭の前夜祭。
気が気の精でならなければ、人間は一時も生きられぬに違ひない。
人いきれの中で、吾は夢見で知らぬ人と今生で最後の邂逅をするやうにして合ひながら、ほら、しかし、最早、一瞥した見知らぬ人は既に私の記憶から忘れられてゐる。
ヒューヒューと風音を鳴らす吾の胸奥に隠れてから暫く立つ《吾》は、
只管孤独を恋しがるのだ。そして端倪すべからぬ存在に対しては終始穴に首を突っ込み、
恐怖の眼下に隠された何かの奥から鋭き視線ばかりがビームを放つ如くに前方の荒涼とした風景を眺めるのだ。
その渺茫たる抽象世界に果たして生命は生き得るのか。
やがてくる砂漠化した世界で
《吾》はゾンビとして墓から抜け出し、
夜な夜な悔し涙を流してゐるのだ。
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