遠くの偽善者より
「金だけ出して汗を出さない日本人」
コンビニのカウンターの募金箱に
千円札を1枚入れながら
そんな言葉が ふと脳裏をよぎる
テレビの映像 週刊誌のグラビア
実情の半分も伝わらない
それですべてわかったつもりで
神妙な表情してみせても
バスルームではキミがシャワー浴びてて
それを待つ僕の右手に水割りのグラス
オーディオはポップな曲を鳴らし
それに合わせてキミがハミング
僕までつられて口ずさみながら
明日のドライブ どの道走ろうか
マップルのページなんてめくってる
何てことはない ありふれたひととき
いつもと変わらぬ夜の中で
おだやかに 時が僕たちを包む
でも 彼らもそれは同じだったはずだよ
未明の その瞬間まではね
災いに遭遇しなかったことに
後ろめたさを感じさせる風潮
どこか変だと思いませんか?
僕たちの街だって 同じなんだよ
その瞬間がいつかはわからないけど
ならば せめてそれまでの間だけでも
平穏な場所 あっていいはずさ
彼らが廃墟から逃げてこれる場所がね
現地へ出向いてもいない僕たちに
実情の半分もわかりはしない
どんな態度をとってみたところで
偽善者であることは免れないね
この1枚の千円札に
どこまで真心がこもってるのか
僕自身にも全然わからないんだ
そんな疑問も 車に戻って
助手席のキミの笑顔にふれれば
フッと消えてしまう自分が可笑しいね
ラジオのニュースが今日もまた
新たな鉄道の復旧を伝えても
国道を飛ばしながら僕たち
キャピキャピとおしゃべりに夢中
「金だけ出して汗を出さない日本人」
千円札の1枚ぽっちで
善人のライセンス買った気になってる
それが 遠く離れたこの街の日常
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