アンコール

「僕とバンドと どっちをとるの?」
今にして思えばつまらないジェラシー
こだわった僕の負けだったんだね

 立見席からでもよくわかる
 ボーカルのキミが眩しく見えるのは
 ライトや汗のせいばかりじゃない
 16ビートのリズムに合わせて
 ステージ狭しと駆け回るキミを
 もう 僕にはつかまえられないさ

アンコールを待たずに去ろうとする
僕の背中をスローバラードが呼び止めた
──シーサイド 停めたクーペにもたれ
 長い煙草に火を点けたあなたが
 哀しげに微笑むトワイライト
 もう 引き返せないの わたしたち──
ストリングスの海鳴りの中で
一瞬 キミと視線がぶつかった

23/11/10 16:05更新 / 春原 圭
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