手のひらの残り香

背を向けて駆け出して行ったキミの
頬紅とファンデーションの香り
僕の手のひらにうっすらにじむ

 キミの左頬と同じくらいに
 痛む気持ちを抱えながら
 夜風にコートの襟立て歩く

フィルムがちょん切れたみたいさ
ピリオドはあまりに唐突すぎて
白いスクリーンが空回り

 どちらに非があるかなんてこと
 ふたりにはもう無関係だよね
 もうキミの後ろ姿も見えない

手のひらの残り香もやがて
本降りになり始めた雨が
あとかたもなく流してしまうだろう

25/08/12 10:44更新 / 春原 圭
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