豊かさの濃霧
エアコンがぬくぬくとした部屋では
僕の世界は生まれてこないこと
気づくのはまだ先の話だった
文学賞受賞作一本で
四畳半から3LDKに
来年印税が入ってくれば
世田谷に豪邸が建てられそう
社会の底辺 じっと見つめるのが
売れない頃からの僕の作風
今手がけてる話も それは同じ
なめらかに進んでくれないペン
安楽椅子にふんぞり返りながら
貧しさにあえぐ主人公の生き方
作り出せるはずなんてないのに
豊かさという濃霧の中で
ハングリーがなくなりかけてること
気づくには まだ時が必要だった
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