ぬか床のキミ

十年ぶりに顔を出したクラス会で
はじめは誰だかわからなかった
そんな僕の態度に 一瞬悲しそうに
唇をすぼめる仕草で 初めて気づいた

 ぬか床に漬かりすぎちゃったんだね
 今もまだひとりでいる僕には
 辛さと酸っぱさがきつすぎるよ

校舎の裏 秘密のクスの木の下で
そよ風におさげ髪なびいた頃の面影
今さら期待なんてしてなかったけど

 それでも 旦那さんと子供たちと
 僕の知らない香りに満ちたぬか床で
 確かにキミは幸せに染まってる

だから 悲しい顔する必要はないよ
すっかり漬かったキミでよかった
僕もいつか自分のぬか床を作るさ
あやふやな想い出に見切りをつけて

24/05/11 19:57更新 / 春原 圭
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