芽→花→実

恋は芽吹いて、愛は実るものだという
それならきっとその間に咲く花がある
私の胸にも何か花が、咲いていたはず
咲いていた、はずで

きっと初めては桜の花だった
確かな自信を以て、麗らかな風に乗り
フリルを揺らすように咲く花
この胸にひとつ
でも、冷たい風が吹いたのか
私が冷たくなったのか
呆気なくその花弁は散っていった

その次は蜜柑の花だった
少し強くなった日差しに焼けて
青い葉をつけ、固く開く花
この胸にひとつ
でも、暑さに身震いしたのか
私が恐れたせいなのか
また直ぐその花弁は散っていった

慣れた頃に咲いたのは百合の花だった
高く伸び、疲れたところで首を傾げ
笛を吹くように揺れ動く花
この胸にひとつ
でも、実らぬ夢を知ったのか
私が諦めていたからか
情けなくその花弁は散っていった

つい先日は葡萄の花だった
小さいけれども蔦を強く巻きつけて
息を呑むほど、甘く香る花
この胸にひとつ
でも、時期を逃し枯れたのか
私が気づけなかったか
瞬く間にその花弁は散っていった

これが実る愛だったのか
芽吹いた恋だったのか
先のなかった花にその答えは解らない
けれどもひとつ
またひとつ
貴方と目が合って
何かの芽が吹いた
そんな気がした

咲かせてみたい
熟れた実を齧りたい
一匙を掬って、貴方に木の実を
私の好みを、この実を当ててほしい
それが叶ったときは

きっと愛が実るとき

25/11/29 23:44更新 / しゃぼん玉
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