理想郷の味
冷暗所から取り出したそれは
よく熟れた椿のような色
掬う両手ごと香しく染める
刃を恐る恐る通せば
蝶の羽を開くように割れ
恥じらう種が顔を見せる
優しい夕陽色の身を崩して
硝子に溶け込む甘い時間を
粉雪と、夏風に包んでは畳む
あとは雪の仕立て屋に頼んで
銀の匙、花と盛る器
口の中、解けていく理想郷
25/09/20 03:41更新 /
しゃぼん玉
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