蛍火のワルツ
秋の虫が鳴くように
夏の虫も鳴いていいはずだ
鈴虫や蟋蟀が震わす音を「音楽」と呼び
蝉が木々に伝って出す音を「喧騒」と呼ぶ
秋の音だけこうも心地良いとするのは
なんともむず痒いというか……
だが案ずることはない
夏の虫は踊っている
蝗は跳ね、蟷螂は腕を振り
蜻蛉はパントマイムで場を沸かす
蝶の羽ばたきを舞と呼ぶように
夏の虫も彼らの舞を見せている
蛍はワルツを踊る稀有な虫だ
光を揺らめかせ、三角形を描く
仲間たちと三拍子を刻み
私達には聞こえないワルツを踊っているのだろう
春の蝶の舞を受け、秋の合唱へ繋ぐため
夏の虫たちは今日も踊っている
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