ウェディングベル(!)
ささやかな寺に齢20の娘が一人。左近くにアオバハゴロモが止まったから、今日は青緑の日と命名しようと彼女は笑う。
それでしかし、彼女はその小さな羽虫からBさんのことを思い出していた。
Bさん。一見垢抜けているよでいて、話し出すとハチドリのホバリングのよに止まらなくなる不器用な女(ひと)。彼女はBさんの不器用さをたまらない愛おしさでもって思い出した。
「こうさぁ、この列をまず順番に並べて…」と机に被さるかぶさる。臀部は後ろに突き出ている。
でもきっとあの折り、Bさんは自分が"女"を匂い立たせているという自覚は皆無だったんじゃないだろうかと彼女は思う。
つまるところあなたイケてる女イケてない女どっちなの?なだらかで愛らしい猫背は亀の甲羅のよに逞しくもあり。
こうね、っと彼女はアオバハゴロモの合掌造りのよな羽に、綺麗に指の腹を添えようとして止める。ピーンとアオバハゴロモとのあいだが張って、蛙飛び込む水の音。がしたよな気がした。
カンカンカンカンと鐘の音が鳴り、胸を仄かに揺らめかせて階段を下る夢を見る。それは胸中のウェディングベル(!)周辺視野をアオバハゴロモが飛び去っていくその軽やかさに触れ。
Bさんの亜麻色の瞳の、とろける夢が吹き込んでくる夏風。
フワ凛、っと、敷地の切り取られたよな広がりに憩うラララ、恥ずかしそなBさんはフフフ。クルクル、クルルと回れば水色近し。入道雲も、もくもくモクモク笑ってラー。
Bさんの口をあーんと開けて、綿飴をふわりとイチゴな舌に載せてみたいんだ。いけないことしてるみたいでしょう。その相似は逆にBさん感づきそだな、とぼけているよで「えっ!?」って言うほど時に鋭かったあなたのことが。
カンカンカンカンと鐘の音が鳴り、胸を仄かに揺らめかせて階段を下る夢を見る。それは胸中のウェディングベル!今度の今度こそ、ウェディングベル。
わたし今度こそ、あの女(ひと)みたいに凛々しい女(おんな)になってみせるわ。
ぜったい!
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