厳冬の密林
密林に咲く花になりたい。夢見るような原色の、艷やかで大きな花弁の花に。ホバリングするハチドリみたいな話し方をするあなたはやはり、ハチドリのように煌めく緑をしている気がする。だったら私は、そんな緑をも呑めるような赤になりたい。ピーチクパーチク仲間に話し続けるあなたを、紅蓮の花弁で誘惑したい。合いの手を入れるだけの観客。何がそんなに楽しいのかしら。私ならもっと、もっと豊かに香る蜜をあなたに差し出すことができるのに。熱帯に雪が降るわけはないけど、それでも私、想像してしまうの。白い塔のような巨木や古代遺跡を思わせるような絡みつく白い蔦のさなかで、負けじと灼熱の時のままに悩ましく咲く私自身の、肉体を。あなたは寒さに凍えていて、その美しい緑も心なしか翳っているように見える。ああ、この世界は私たちには生温かすぎる。私たちを追い立てる何かがもしあれば、私たち厳冬の闇に咲くことができるかもしれないのに。あなたはもう行く先がなくなって、藁にもすがる想いで私の花芯をつつき出すの。そしたら私、花芯はそのままに蛇になって、あなたの健気な身体に巻き付くの。もうぜったいに離さないと誓いながら。
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