魔女っ子
君の笑顔がとろけそうだったから
夕方まで僕は幸せだった
君を見てると夢を見ている心地がする
いったん仕舞われたはずの夢が
君の姿を通して甦る
アスファルトの上を歩きながらそのじつ
あたかも中世の東欧を歩いている気分
君の笑顔がイコンになってゆらゆら揺れる
グレーの堅牢な新築の家の中には
しおらしくも綺羅びやかな金箔の絵画の気配
空はじつは清らかな水面なのかもしれないなと
絢爛たる地上と澄んだ天界が合わさって
『オルガス伯の埋葬』のごとき夢幻を見る
けれど力点はあくまで地上
その中でももちろん君の
眼尻を下げた弾ける笑顔
カフェを勝手に教会にして
頬のうっすらとした紅色が
青の背景に仄揺れて切ない
でも仄暗くなり寒さが身に堪え出すと
僕は暖かくも妖しげな焔を求め出した
次の角を曲がった暁こそは
悩ましげな魔女っ子と鉢合わせるんだ
闇と同化した灰色のロングスカートから
仄かにふくらはぎの雪の色
覗いたならば目眩でフラフラ
夢と呼ぶには生々しい肌触りの予感が
君という清らかな夢をも越えてゆく
ともに灰色の大地に埋もれたい
夜が深くなるほどに
漆黒のさなかに溶けゆくように
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