おかえり
たとえば高らかなファンファーレなんかよりも、室外機の無機質だけれどなんだか落ち着くような音。ティースプーンでココアを溶かすときのカチャカチャなんて音もいい。そんな音たちはささやかで漠としながらも、あたかも星座を象るようにこの胸にしんなりと居着いている。
なんでああも輝かしいものばかり求めてたかなぁ。新潮新人文学賞、当選者−はちみつ!なんて想像をしては。高貴な装飾品を作るよりも、いまはとにかく愛らしいお菓子を作ってみたい。
正確には日常こそが輝かしくって、栄光こそが紙切れみたいなものなのかも、とすら思ってきていて。まだまだ愛を、知らない僕。ということはほんとうの孤独もまた、きっと。しとやかな愛を日々に籠めれば雨靄のなか、白いユリの仄かな香りへたなびくように、離れてもまた手繰りよせて、、、
それらはまだ甘い仮想の段だけれども、日々にふたたび夢を見れてる。浮ついた頂上バトルから降りてみれば、待っていたのは侘しさとは逆の世界。純白のユリのおかえりの声。
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