敬虔と優しさ
この頬を撫でる港町の陽気な風が
あの厳粛な北国の町へと吹き渡ることはあるのだろうか
厳しく堅牢な城の傍らあなたは可憐に
しかしピリッとした大気にあくなき敬意を捧げるようにして佇んでいた
冬の職務の合間にあなたは僕を指導してくれた
積雪の沈黙が結晶したかのような
キリッとした優しさで
夕暮れ時にはまだ早いというのに
泣き立てるようなユリカモメの声に僕はむせび泣きたくなる
敬虔と優しさというこの世界の至上のものは
もうはるか海を隔てたあの雪の町にしか存在していないかのよう
すべてが雨粒となり始原へと還る朝の、安らぎも
ああ
この風に祈りを乗せてあなたへと託したとしても
あなたの心はあの堅牢な城に籠もったままなのでしょう
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