ワスレナグサ
あの手作業工場に勤めていた折
休憩室を2人きりの語り場にして
静寂のなか君に何度想いをぶつけたことだろう
詩が評価されないこと
彼女がなかなかできないこと
過去の過ちから自分を責めてしまうこと
亜麻色の瞳を見つめてはうつむき
また見つめてはすぐにうつむく
澄んだ瞳はずっと僕を見続けていて
衣服をすり抜けそれは僕のすべてを洗って
君は罪とも後悔とも無縁だったのに
この胸の底の底まで馳せてくれた想いの
その透き通った純真さのためだけに生きようと思った
健気であどけなくって
でもしっかりと自立していたそんな君は
最後の最後までどこか不思議で
まるで特異点のような君に触れたかったけど
それはついに叶わなかった
君は詩なんて、まさか書いていないよね
そう思うとなんだか笑いが込み上げてくる
だって僕には君の生そのものが詩だったんだから
野に咲くワスレナグサみたいに可憐で
優しくて儚げで、そして凛としていて
君はつまり、愛のすべてを持ってたんだ
一度話しただけだけど
魂から湧き上がり続けたリフレイン
名を呼んでくれた折の君の声
この胸にいまも響いてます
切ない夢のように
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