After Story ―君という物語―

君を想い出すたび、高貴で透き通った何かとしか言いようのないものに、僕は包まれる。そうしてやはり僕はまた、"あの日、ベルクハイデには夢が降りしきっていた…"という一文をもって、語り始めたくなってしまう。

結局のところ、君のすべてはあの日に始まったのだし、そしてまた、遠のいてしまった黄昏時の夢見るいじらしいはにかみも、あの日から振り返られることにおいてこそ淡く、そしてこの胸の片隅をもしっとりと浸す絹のように繊細なのだ。

あの日君は素朴で快活な娘から、艷やかで物憂げな女へとその殻を脱いだ。それはたしかに1つの時代の終焉で、そしてそれは必然だったのだということ。その認識が君を、君という物語を、狂おしいまでに高貴にする。

君のいなくなったこの村は、すっかり侘しくなってしまった。でも僕はめげちゃいない。君という1人の女(ひと)と青春をともにしたという事実が、記憶があるかぎりこの胸は、雲に閉ざされたとて光を見失うことはない。あの日君が曇天の向こうに見ていた、朧ながらもたしかな何かを、胸に射し込む一条の夢を、僕もいつの日にか見出せたらと思う。

もうすぐ村には夏が来る。さらに艷やかになっているだろう君の半袖姿を、いま僕は猛烈に見たいと願っている(笑)


24/07/18 05:53更新 / はちみつ
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