彼女のようにありたいから
幼い自分の雰囲気をよく理解していて、誰に対してもへりくだるような女(ひと)だった。誰とでも仲良くする器用さは持ち合わせてなくて、頻繁にそのきらびやかな愛想笑いを距離を保つために振り撒いていた。玄関口で靴を仕舞う折の透き通ったように孤独な横顔を、忘れることができない。
まさか彼女は僕が彼女に、1つの理想の生き方を見ては崇めているなどとは知らないだろうと思うと、なんだか不思議だ。職場を去って半年になる今、彼女の中で僕という存在は消えかかっている。僕の中で彼女という存在は、孤独を感じている今さらに大きくなっている。燃え揺らめく、焔のごとく。
言い忘れてたけれど、生きてきた38年近くの中でも彼女は飛び抜けて可愛いかった。あの鳥肌が立ってしまうような、健気で澄んだ美のトーン。転居した、遥か遠くのこの街の空の青に、探って。彼女のようにありたいから、僕は詩を書き続けているのかもしれない。
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