狸のキャロル
狸のキャロル
狸のキャロルは歌わない
彼は若い頃から歌を口にしてこなかった
理由を聞いても多分答えてはくれない
狸のキャロルは痩せた爺さんだ
ふわふわな毛の上からでも
キャロルのあばらの数を数えられるくらいに
狸のキャロルの巣がどこにあるのか誰も知らない
夜になると山の奥の方に行ってしまう
キャロルは月を信じていない
多分キャロルは自分も信じていない
狸のキャロルは友達がいない
昔は明るいやつだったが
一度きりの恋が悲しい終わりを迎え
彼を静かなやつに変えていった
今日もカラスのお告げが夜を知らせ
山の斜面を滑るように夜の帳が下りてくる
フクロウが目覚めるまでのひとときに
キャロルは山の奥へ歩いていく
誰にも会わないように山の奥へ
キャロルの爺さんは孤独に夜を歩いて渡る
思い出の星を探しながら
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