狸小路ベンチ

とがって生きてきた

この街ではそれが正義だと

教えられたから

だけどお前に出会って

ぬくもりを知った

何も持ち合わせてはいなかった

失うものなどなく 何も恐くはなかった

だけどいまは失うのが怖くてたまらない

どうして守ろうか 守り切らなければ

街角に聞こえてくる歌は社会を恨み 嘲笑う

男が弱いハートに泣き言を垂らすなど

笑止千万

こうしなければ

これが正解でなければ

こう生きなければ

あなたに愛されなければ

私は存在する価値などない


そんな世界は美しくない

人生はそんな寂しいものじゃない

目の前のベンチにそっと座ってごらん

行き交う人々はとても忙しそうだ

でも誰一人として

生きる意味など知ってはいない

ただそこにあるのは平等に死ぬということ

自分の欲望や幸せを求めるばかり

まわりが見えなくなっているだけさ

あゝ、愛しいかな

人間は愛しいかな

愛すべきものはそこにあり

23/02/05 23:59更新 / なまこ
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