火の粉
後に知った
私は父の実子でなかった
昔からろくでもない男で
酒に浸っては母を怒鳴りつける
ガンが見つかり
先は長くなかった
それでもなお
死に際まで周りに迷惑をかける
そんな父親だった
そんな父親が
跡形もなく死んだ
まるで祭りのあとのように
虚しさだけを残して
どんな人間にも終わりがくる
良くも悪くも
せめて最後に
私の手で火葬してやろうと思った
だけど戸籍上 私は実子ではなかった
葬ることすらできない
遠方の父の親族から
印鑑が一つコロリと届いた
いま、父は何を想うだろう
火の粉がバチバチと鳴く
熱くも冷たい炎が心に焼きついてゆく
帰り道はいつにもまして遠くに見えた
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