火の粉

後に知った
私は父の実子でなかった

昔からろくでもない男で
酒に浸っては母を怒鳴りつける

ガンが見つかり
先は長くなかった

それでもなお
死に際まで周りに迷惑をかける


そんな父親だった


そんな父親が
跡形もなく死んだ

まるで祭りのあとのように
虚しさだけを残して

どんな人間にも終わりがくる
良くも悪くも

せめて最後に
私の手で火葬してやろうと思った

だけど戸籍上 私は実子ではなかった
葬ることすらできない

遠方の父の親族から
印鑑が一つコロリと届いた


いま、父は何を想うだろう

火の粉がバチバチと鳴く

熱くも冷たい炎が心に焼きついてゆく

帰り道はいつにもまして遠くに見えた



22/09/20 22:49更新 / なまこ
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c