日曜日のセイレーン

窓辺から見るさざ波は
銀の涙を流しながら私を誘う

人魚の眠るこの海は
あの世とこの世の渡し海で
歌声に呼ばれた者は
魅惑の美潮に連れ去られるという

ふと気づけば
柔らかな歌声が聴こえてくる
どこか懐かしく昔聴いたことがあるような

腰まで浸かった海水に驚き
もがいてみる
人魚の鱗がアヤしく光り
私に後戻りを諦めさせた

カチャン コン
箸がテーブルに置かれ茶碗に白米がよそわれた
下から妻が夕食を知らせる
その香りに誘われて
私は階段を降りた

23/08/12 05:58更新 / なまこ
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c