夢と現実の狭間で
眩い閃光が
私の視界を真っ白く遮り
気が付けば目の前には
瓦礫の山と化した廃墟が拡がっていた
崩れ落ちた建物のなかには人影も見あたらず
ただ不気味なほど静まり返った情景のなかで
サラサラに乾いた砂の嵐が吹き荒れている
突然の出来事にパニクりそうになる私の目の前を
アメリカ人らしき一陣が
なにやら楽しそうに喋りながら通り過ぎた
まるで自分たちが落とした一発の爆弾の後を
確かめるための観光にでも来たかのように
いちいち建物のなかを巡っては談笑したり
写真を撮ったりしている
焼けるように熱くこみ上げてくる胸を押さえて
私は目を覚ました
瞬間あの目の前に拡がっていた悪夢の惨劇は
イラクであることを何故か悟った
私は急いで一階のリビングへと階段を下り
リモコンでテレビのスイッチを入れた
ちょうど画面では
サダム・フセインの銅像が引き倒され
群衆の興奮と歓喜が極まるなかで
星条旗が建てられるところだった
これから起こるであろう出来事を
露とも知らぬイラク民たちを後目に
アメリカ兵の戦車は
砂でさび付いたキャタピラを軋ませながら
まるで先住民の土地を汚していくように
何の気兼ねもなくズンズン進んでいく
私は虚しさと怒りを
どこにぶつけたらいいやら分からぬまま
ただ今朝の夢の続きを改めて
現実のなかで見つめていた
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