悪徳の泉
暗い闇の深淵から何者かが
強く私に呼びかけてくる
暗く澄んだ泉
どす黒い手が私の服の袖を掴んで放さない
私の脳は痺れたようになって靄がかかる
引き摺られるまま私は暗い泉の底へと
体ごと投げ出すのだ
魑魅魍魎どもの雄叫びを聴きながら
私は悦楽の極致に酔いしれる
心地好く揺れる快楽の揺り篭に乗って
私は世界中を飛び回り
やがて私の身体はドロドロに溶け
再び闇の泉へと舞い戻る
暗き泉の底から私を呼ぶ声がする
恐ろしく懐かしい声
私の心を溶かし込み放さぬ声
抗えぬ力が作用して
私を再び無意識の世界へと導き出すのだ
私は幼き頃
子供らしい正義を愛すのと同時に悪をも愛した
あのドロっと蕩けるような感覚
忘れえぬ感傷
味わい深きエクスタシー
悪への哀愁
咆哮
時を駆け抜け私は私となる
闇夜に目を光らせ
敵の匂いを瞬時に嗅ぎ分ける獣となる
黒い扉に隠された私という獣が飛び出すのだ
まるで待っていたかのように
血走った眼を光らせ
人間の黒い血を追い求める暗闇こそは
私の安穏な巣窟
今宵もまた私本来の野性を取り戻す
途切れた時間を縫い合わせ
暗い欲望を撒き散らす
さあ黒く染まれと願いを込めながら
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