毒薬と娼婦

深い眠りが更に深い眠りへと私を誘い
絶望の波が私の体ごと岸辺へと押し流していく
私の魂は紅い血を流し
辛い塩水によって洗い流されていく
だんだんと意識は遠のき
やがて真っ白な空間が私を支配するだろう
懐かしい望郷の念も母に抱かれた温かな思い出もすべて
暗い海底へと沈めながら
生けとし生けるものの哀しみを背負い
私は闇へと己を貶めていく
追い詰められたケモノは牙を向くこともなく
涙を堪えながら傷をさらに深くえぐり出す
誰かの声を聞くでもなく
かといって自らの避難の声に耳を傾けるわけでもなく

愛だの恋だの人生だの茶番はもうとっくに終わったのだ
私には何ひとつ残されていない
苦い思い出以外は
幸せそうな微笑みからはすべて目を逸らして
無関係だと空虚な胸を張る
白い目をした人々が薄ら笑いやこけ脅した眼差しで私を見る

ああ!ああ!私は生きた心地がしない
どうか私に毒薬を一瓶ください
私は震える手でびんの蓋を開け
素早く紫色した唇から渇いて干からびた喉元へと
液体を流し込むだろう
流し込まれた液体は体の隅々へといきわたり
媚態と偽りに塗れた空虚な心を満たすだろう






24/06/09 00:19更新 / 秋乃 夕陽
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