通ずる心
植物園前で年配の女性に声をかける
戦争法案反対のビラを渡して
署名もしてもらうためだ
「もしよろしければお願いできますか?」
しかし、女性からは
歯切れの悪い言葉が返ってきた
「戦争法案反対いうけど、他国に攻められたら怖いし」
私は意を決した
「実は私、非正規社員なんです」
突然の言葉に驚く女性
「えっ?」
少し怪訝そうな顔をする
「今の戦争法案が通ったら、お金のない私たち非正規社員は
いずれ自衛隊に入らざるを得なくなって
アメリカの為に戦争へ殺されに
行かなければならなくなるかも知れないんです」
私の思い、若者の本当の気持ちを伝える
ふと考え込む女性
「そう。自分のなかで答えはまだ出せないけど」
そう言って女性は署名用紙に手を伸ばした
「私も戦争を経験しているし、一応署名しておくわ」
強く響く言葉
経験しているからこそ突き刺さる女性の思い
「ありがとうございます」
私は深く頭を下げた
女性の真心に応えるために
これからの未来のために
女性はその後も立ち止まりながらじっくりと
ビラを読みながら
戦争と私たち若者の未来について
考え込んでいた様子だった
どんなに意見が違っても相手に
真の胸の内を伝えれば通ずる
そう確信した瞬間だった
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