あの人
お父さんと呼べないあの人
お父さんと呼びたかったあの人
幼い私や母や弟を悩ませた
心が豹変して
子供のように振る舞うあの人
それでも私の父だった
あの人をお父さんと呼び懐かしがると
母はまるで燃え上がる炎のように私を叱った
母にも嫌われ
弟にも嫌われ
私にも嫌われたあの人
あの人の青白い顔が
でっぷりと太った腹がやけに懐かしい
思い出は破られて
紙屑となって散った
血迷った眼も
半笑いに空いた口も
名も知らぬ者と共に
黒い土の中へ
それでも私には…
あの人からの血を恐れ続け
心ならず慕うあの人
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