稲妻の記

まるで待ってましたとばかりに横殴りの雨が
僕の肌を情け容赦なく突き刺してゆく

我が身をかばうように頭の上を両手で押さえ
出来るだけ速足で歩こうとするのに
脚が絡まって思うように巧く前へは進めない

雨はますます激しくなり
アスファルトに跳ね返る雨音が
僕を嘲り笑うかのように
僕の耳をつんざいてゆく

僕はぐっと憤りを抑え
渇いた瞳で灰色に濁った無常の空を仰ぐけれど
それでも雨は止む気配すらない

あぁ、遠くで雷鳴が聞こえる

腹の底から響くような微かな轟は
今にも挫折しそうな僕の弱き精神(ココロ)を
奮い起たせてくれる

そうだ僕にはまだ光がある
可能性という光

曇った天の隙間を縫って
大地を舐め尽くす稲光のように煌めく
一閃を与えてやろう

凄まじいほど強烈なプラズマの衝撃で
澱んだ傷みすら焼き尽くせ

やがて雲は流れ
爛れた傷痕から若葉が芽吹く頃
他の生き物達も途切れかけた息を吹き還してゆく

憂鬱な風を跳ね付け
湿り気を帯びた衣を脱ぎ捨てた時
初めてヒトは新たな局面に遭遇するのだ

未知なる道を突き進み
誰も知らない僕だけの秘境を愉しもう

その場限りの甘い誘惑ですら
今はなんの魅力も感じない

今こそ、雨で濡れそぼった大地を力一杯蹴り上げて
鼻先で笑い飛ばしてしまえ!!

24/09/01 00:29更新 / 秋乃 夕陽
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