獄門の紅い糸
もし貴方とまた再会出来るチャンスが与えられたとしても
私は他の女みたいに奇声を挙げて
それに飛び付いたりなんかしないわ
余裕の笑みでどんなことでもやり過ごして見せる
だってそんなのもう私には大した問題ではないんですもの
強がりでも何でもないわ
貴方と出逢えたおかげで私には
恋なんて関係ない
そう思えるようになったの
どうぞ、褪めたスープを召し上がれ
生温い液体をスプーンで掻き混ぜて
ドロドロの感触をご賞味あれ
黄色く濁った半固形の液体が
貴方と私との関係を沼の底へと沈めたとしても
私はちっとも驚かないわ
たとえそれがふたりの運命だとしても・・・・
フフフ、可笑しいわね
こんなに空がどんより憂鬱な灰色で覆っていても
私はちっとも苦にならない
むしろ晴ればれとした気持ちにすらなるの
一粒の雨が私の頬を撫でながら流れ堕ちてゆくけど
それはもう貴方の顔すら見なくても良くなった事に対する
安堵と喜びでしかない
あぁ、貴方という不埒な男を想い続けた私を
獄門の鬼が卑劣な音で鞭打つの
ピシャリピシャリと長くて黒い舌が
私の体を舐め回しては苛んでゆく
奇怪にねじ曲がった時計の針が
長く切ない時の流れを延々と指し示す
あれほど恋焦がれた白い光忽を貴方は知らないけど
貴方との柵を突き崩す鍵を私が手に入れたならば
貴方はきっとガンジガラメに縛り付けられた絆から
解き放たれるだろう
そう、いつかきっと私が貴方を
茶色く変質した紅い糸から断ち切ってあげよう
いつかきっと・・・・
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