刹那の水温

ココロに刻むように君の面影を想い浮かべ
君の名前を呼ぶ
胸の奥底から沸き上がる慈しみが
私をヒトとして在るべき姿へと蘇らせ
愛しさが果たせぬ夢を苛む

君の幻が湯船の小波に揺られて
煌めいていた
柔らかな感情が
私に囁きかけては消えてゆく

刹那に流した冷たい涙は
私の頬を伝い落ち
やがて生温いお湯の中へと
溶けてしまった
けれど、君の温かな眼差しは
私の脳裏から消えることはない

あぁ、君の微笑みが
私の最奥をえぐる凶器となり得ても
君の瞳にしまいこんだ輝ける太陽は
私の気持ちの裏で
いつまでも真っ赤に燃え盛るだろう

君というヒトが存在する限り
私は一生をかけて
君の記憶が不本意に
消え去ってしまわないように
ココロの宝箱(ハコ)へと
大事に仕舞い込んでいるだろう

それが唯一、君への抵抗
それだけが叶わぬ恋に苦しむ
私の中の道化を嘲笑う手だてとなりうるから

24/08/29 00:27更新 / 秋乃 夕陽
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