美神の失墜
昔、神々しいほどの美しさを纏った少年が
その眩い光で人々の眼をくらませ
天使のような澄んだ歌声で
人々のココロを揺さぶり
魅了していた
神をも羨むその美貌を
誰もが永遠のものと信じ
彼自身も決してそれを疑おうとはしなかった
しかし、月日は流れ
彼の額にも愛と苦悩の年輪が刻まれた頃
徐々に明るく周りを照らす月に暗い影が忍び寄る
あぁ、残酷なほど老いたその肌は昔の面影すらなく
張りのない人生にさらに拍車をかけてゆく
彼は喪いかけた美を補おうと
ありとあらゆる宝玉を身に纏い
人生で学んだ常識を振りかざして
セチガライ世間に立ち向かってゆく
これが『美』なのだと豪語しながら
暗闇で光を喪いし人々も
ココロの潤いを求めるかのように
彼の言葉一字一句をまるで真実であるかのように信じ込み
彼らの新しい神を拝み奉っている
何が『美』であるかを真剣に考えようともしないで
美とは・・・
美とはなんであろう?
それは我々に語り継がれる輝き
一瞬にして燃え上がり瞬く間に燃え尽きる炎
世間の汚れを知らず
カタチを喪いし後もヒトの瞼に記憶される
抽象的媒体
人々のココロに何らかしらの作用を及ぼし
そのヒトの人生すら変える力を持った存在
それが『美』なのだ
私は待とう
真実の美神が現れるその日まで
溢れんばかりの輝きを放つ美神は
必ず、天地の恵みによって創られ
出現するであろう
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