柔かな闇
煌めく刃
一直線にひかれた赤い線が
柔い肌のうえで徐々に滲んでゆく
冷たい雪のような感触が
私の背筋から流れては消える
静かに
静かに
時間ばかりが過ぎて
何もかもが動こうともせず
立ち止まったまま
月明かりに照らされた闇は
涙の意味すら知ろうともせず
そ知らぬ顔で私を見下ろしている
微かなボンボン時計の針の音が
私の最期を急かすように
耳元まで聞こえてくる
嗚呼、こんなにも生きることは苦しい
人はみな傷付けあい
泥まみれになりながら生きている
人を笑うことを生活の糧として
弱きココロをひた隠しにしている
柔かな闇よ
私の血潮でこの世を清めたまえ
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