海底のレクイエム

つめたい海の底は
深い
深い
海草が生い茂ることも魚が泳ぎ回ることもなく
ただ一面、暗い闇が覆うだけ
光を求めて海面(そら)を見上げても
何も見えない
何も聞こえない
ああ
ゆらゆらと揺れる幻をこの手に掴もうとして
喘ぐ深海魚のようにただじっと息を潜めて
濁った眼で闇を見つめている

私は心の毒
すべてを腐らし、無に還す
水に漂うこの身を持て余らせては
人々の希望すら奪ってしまう醜物(かいぶつ)
光の導き(オーロラ)が訪れるまで
私は己を赦すこともできず
ただ罪を償うため
暗い牢獄で一生を送っている
夢なき幻(ゆめ)を追い求め
かなわぬ想いばかりかみ締め
光なき愛に餓えながら
海中に漂う魂

我が願いよ
海面(そら)へ届け
そして、この汚らわしき身を
光の洗礼(レクイエム)によって清めておくれ

もしこの願いが叶うとするならば
我が身の安らかなる時間(とき)を瞬間に閉じ込めて
私は永遠の夢を見続けることが出来るだろう

24/07/16 08:49更新 / 秋乃 夕陽
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